日本には、各地で生まれ、作られてきた郷土玩具があります。
旅行先で入ったおみやげ店、お参りの露店や出店などで見かけることがあります。
どのような歴史や意味があるのでしょうか。代表的な郷土玩具をご紹介します。
郷土玩具とは

郷土玩具は、地域の子どもたちの健やかな成長を願って作られました。
北海道から沖縄まで、日本全国にあり、地域の伝統工芸品でもあります。
郷土玩具の特徴

郷土玩具は子ども向けの遊び道具であるもののほか、民間信仰に結びついたものが多く見られます。
その土地の風土や暮らし、また、伝統的な技術と着想がみられ、民芸品としての個性があります。
材料は、身の回りにあるもので比較的入手しやすい安価なものが使われます。
木や竹、土、藁(わら)、布、糸、紙などがほとんどです。
郷土玩具の歴史

郷土玩具は、庶民の文化が開花した江戸時代中期から明治時代にかけて作られるようになりました。
現代と異なり交通や物流が地域に限定していた頃は、玩具も地方特有のもので、郷土玩具そのものでした。
今では、郷土玩具を作る職人が減り、たびたび消失の危機がありました。
収集して楽しむ人や郷土文化を継ぐ人、大切にする人に支えられ、玩具文化が今に伝わっています。
郷土玩具は縁起物!?

縁日や露店などで並んでいる郷土玩具は、安産や子の成長を願ったものや、開運や長寿、商売繁盛、豊作を祈願した縁起物が多くあります。
郷土玩具の多くは人や動物などの人形ですが、これらの歴史は縄文時代にまで遡ります。
縄文時代には土偶や木偶が信仰の対象として作られました。
特別な力を持つとされてきましたが、時が経つにつれて、子どもたちが遊ぶ玩具として変化していきました。
郷土玩具はどのくらいある!?

全国で作られた郷土玩具は、約3,000種と言われています。
江戸時代の後期から数々の郷土玩具が生まれましたが、その頃は土人形の産地だけでも全国で100ヶ所あったといいます。
これらの素朴で独創的な玩具は、日本の民族玩具として海外にも広く伝わり、高く評価されています。
全国の代表的な郷土玩具
日本各地には多くの郷土玩具がありますが、ここでは代表的な郷土玩具を見ていきましょう。
東京都の郷土玩具丨犬張子

犬はお産が軽く、一度に多くの子を産むことから、古来より子宝、安産のお守りとして愛されてきました。
また、狛犬がモデルとされており、魔除け、厄除けとしてのお守りの意味もあります。
福島県の郷土玩具丨起き上がり小法師

何度転んでも倒れても、起き上がることから、七転八起の縁起物として愛されています。
江戸時代初期に、会津藩士が冬の間の内職として作り、正月に売り出したのが始まりとされています。
家族の人数より1つ多く買い、家族や財産が増えるように願います。
熊本県の郷土玩具丨肥後まり

江戸時代の前期に、お城で働く女中たちの遊びとして作られたのが始まりとされます。
芯にもみ殻で、草木で染めた木綿糸で刺繍を施した美しい色合いの玩具です。
麻の葉、椿、三角づくしといった13種類もの模様があり、 1つの肥後まりに4色ほどの色を使います。
青森県の郷土玩具丨鳩笛

鳩の形の笛玩具で、吹くと「ホー」という素朴な音色の鳴る郷土玩具です。
食卓に置けば、子どもの食事ののど詰まりを防ぐおまじないとして使われました。
津軽藩の藩士が閑散期である冬の間に、子どものおもちゃとして作ったのが始まりです。
岐阜県の郷土玩具丨さるぼぼ

さるぼぼは飛騨の言葉で、猿の赤ちゃんという意味です。
母親が娘の良縁と安産、夫婦円満を願い、また、子どもが健やかに育つことを願って作られました。
ほかにも、猿は音読みで「エン」と読むことにちなみ良縁のお守りとして、訓読みで「去る」と読むことから災が去るという2つの願いが込められています。
山口県の郷土玩具丨金魚提灯

幕末の頃、商人が子どもたちのため、伝統織物である「柳井縞」の染料を使って作ったのがきっかけです。
もともとは子どものおもちゃとしての役割でしたが、やがて、神社のお祭りなどのお迎えちょうちんの中にも見られるようになりました。
夏祭りには浴衣姿の子どもたちが、金魚提灯を片手に、町に出かけていく光景が見られたといいます。
栃木県の郷土玩具丨きぶな

昔、天然痘が流行した時、栃木県宇都宮の川で釣り上げた黄色のふなを食べたところ、病気が治ったと伝えられています。
赤い顔、黄色の体が特徴的で、張子を神棚に供え、無病息災を願うようになりました。
大阪府の郷土玩具丨神農の虎(張り子のトラ)

大阪府にある道修町は、薬の町として知られています。
道修町にある少彦名神社は、薬の神である少彦名命を祀っており、毎年11月の神農祭では張子の虎が授与されます。
神農の虎として、魔除けや健康祈願のお守りとされています。
北海道の郷土玩具丨ニポポ

ニポポは木彫りの素朴な人形で、こけしのような形で「アイヌこけし」「網走こけし」とも呼ばれます。アイヌ語で「小さな木の人形」を意味しています。
狩や漁の時にはニポポに祈りをささげ、収穫時には飾り物を付け、感謝したといいます。
また、料理の際にはニポポにお供えをするという風習もあります。
愛媛県の郷土玩具丨姫だるま

子どもが姫だるまで遊ぶと健やかに育ち、飾ると病人の起き上がりが早くなると言われています。
結婚、出産祝いなどで贈られることが多い、松山の伝統工芸品です。
まとめ丨縁起の良い郷土玩具の由来と意味
ここまで郷土玩具をご紹介してきました。
可愛らしい姿とは別に、その土地の文化や風習を知ることができて魅力的に感じます。
現代では機能的な面より芸術的な側面が大きいですが、由来や意味を知ることで日本を知ることにもなります。
今後も継承していきたい大切な日本の文化です。
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